質量と移動距離の時間二階微分と、作用反作用と、慣性で、どこまで記述可能かの例として大学入試過去問を解きます。
大学で学ぶ知識も使います。
筑波大学の2017年前期の物理の第一問です。
問題
正しい問題はパスナビから見てください。
高さRから小球を落とします。
小球は円の形状の台に沿って移動して、高さR/2で飛び出します。このときの角度は60度です。
問1 Q
横方向(右)をxとします。
縦方向(上)をyとします。
\(v_x\)と\(v_y\)を求めよ。
問1 A (マウスオーバーで文字が見えるようになります)
ちからと速度の内積を考えます。
質量と速度からなる量を運動エネルギーと定義します。Kinetic energy。
位置を入力する関数の方をポテンシャルエネルギーと定義します。この場合は位置エネルギーと呼ばれます。Potential energy。
\[
\boldsymbol{F} \cdot \boldsymbol{v} = m \frac{1}{2} \frac{d}{dt} v^2 = \frac{d}{dt} \frac{1}{2} m v^2 = \frac{d}{dt} -U(\boldsymbol{r})
\]
運動エネルギーとポテンシャルエネルギーが等式で結ばれます。移項すると、その和はゼロとなります。最初に上に投げる場合も含めて、落下運動において運動エネルギーがゼロのときがポテンシャルエネルギーが最大となり、ポテンシャルエネルギーがゼロのとき運動エネルギーが最大になることを示しています。
\[
\frac{1}{2} m v^2 = -U(\boldsymbol{r})
\]
最も直観的なデカルト座標で考えて、その方向に偏微分するとちからになる関数を考えると、質量と速度で表される量と対応します。
運動エネルギーだけ、ポテンシャルエネルギーだけ、を考えると、なんやねん、ということになってしまうと思いますが、等式で結べるので価値があります。
重力について一様な場を考えます。Z方向のみを考えれば十分です。
\[
\frac{\partial U}{\partial z} = -F_z = -(m(-\boldsymbol{g}))
\]
地面を高さゼロとします。
\[
U(\boldsymbol{r}) = -\int_{0}^{r} m(-\boldsymbol{g}) d\boldsymbol{r} = -m(-\boldsymbol{g}) \int_{0}^{r}d\boldsymbol{r} = mgr
\]
最初の位置エネルギー : mgR
飛び出すときの位置エネルギー : mg(R/2)
円の形状の台によって、mg(R/2)が運動エネルギーに変換されました。
なので、エネルギーについて考えて、位置エネルギーmgRがmgR/2に減り、その分運動エネルギーがゼロから\(mv_B^2/2\)になります。
\[
\begin{align*}
\frac{mgR}{2} &= \frac{mv_B^2}{2} \\
gR &= v_B^2
\end{align*}
\]
$$ v_B = \sqrt{gR} $$
\[
\begin{align*}
v_{Bx} &= \cos 60^\circ \sqrt{gR} = \frac{1}{2} \sqrt{gR} \\
v_{By} &= \sin 60^\circ \sqrt{gR} = \frac{\sqrt{3}}{2} \sqrt{gR}
\end{align*}
\]
運動エネルギーってなんやねん、高ければ高いほどエネルギーが高いってどういうことやねん、と思う方が普通と思います。
ですが、場やその勾配の議論を理解して、ポテンシャルエネルギーから議論を展開できるようになれば強いです。
どうしても納得がいかない場合は、できるだけ損失の少ない状況を自分で作って、落とした玉の高さと速度の関係を記録しまくると、位置エネルギーと運動エネルギーは交換可能っぽいという予想が出てくると思います。観測しやすいように角度が小さい斜めの台を用意して、落とす玉の高さと横方向の移動速度が二乗の関係になることは自分で確かめることができます。ガリレオの実験です。
ガリレオやニュートンの前の時代は、小球が飛び出したあともずっとちからが作用しているから球が移動すると考えられていたようです。
デカルトはちからを渦と考えていたとのことです。質量の大きい素粒子なんかの周りは本当に渦なのかもしれませんが。
やはり、運動とか、ちからについて、質量と速度の積から解析していたようです。
問2 Q
小球が飛び出した後の、小球の高さについての最高到達点を求めよ。
問2 A (マウスオーバーで文字が見えるようになります)
横方向は、飛び出した後は等速です。
縦方向は、重力により下方向にgだけ落とされ続けます。
縦方向の運動エネルギーが全て位置エネルギーに変換されるときを考えます。
\[
\begin{align*}
\frac{1}{2} m (\frac{\sqrt{3gR}}{2})^2 &= mgR’ \\
\frac{1}{2} \frac{3gR}{4} &= gR’ \\
\frac{3gR}{8} &= gR’ \\
R’ &= \frac{3R}{8}
\end{align*}
\]
R/2から飛び出しているので、最高到達点は7R/8。
問3 Q
最初の着地点について、飛び出した位置からの横方向の距離を求めよ。
問3 A (マウスオーバーで文字が見えるようになります)
まずは縦方向について考えます。
7R/8までは、上昇し続けます。そこからは落下します。
次に横方向について考えます。
速度しか情報がありません。なので、縦方向の時間の情報が必要です。
また、縦方向について考えます。
高さと速度と重力がわかっています。時間を計算できます。
基本に戻ります。
移動距離を基本から計算します。
等速運動と等加速度運動のみを考えます。
時間の表記は下記の対応とします。
\[
\begin{align*}
t_A &= 0 \\
t_B &= t
\end{align*}
\]
一般の運動の場合。一般と言っても、直線かつ摩擦なし空気抵抗なし、です。
面倒なのでベクトル表記をやめます。
$$ r(t_B) = r(t_A) + \int_{t_A}^{t_B} v(t) dt $$
等速運動の場合。
$$ r = r_0 + v_0t $$
または、
\[
\begin{align*}
r(t_B) &= r(t_A) + \int_{t_A}^{t_B} v_0 dt \\
&= r(t_A) + v_0 \int_{t_A}^{t_B}dt \\
&= r(t_A) + v_0(t_{B}-t_A)
\end{align*}
\]
等速でない運動の場合。
例えば、
$$ v(t) = \frac{1}{2}t^2 + 5 $$
こんな感じで扱いやすい、積分しやすい関数に近似できれば、仕事で使えるかもしれません。
例えば、
$$ v(t) = v_0 + a_0t $$
等加速度運動です。
\[
\begin{align*}
v(t_B) &= v(t_A) + \int_{t_A}^{t_B} a_0 dt \\
&= v(t_A) + a_0 \int_{t_A}^{t_B}dt \\
&= v(t_A) + a_0(t_{B}-t_A)
\end{align*}
\]
\[
\begin{align*}
r(t_B) &= r(t_A) + \int_{t_A}^{t_B} v(t) dt \\
&= r(t_A) + \int_{t_A}^{t_B} (v_0 + a_0t) dt \\
&= r(t_A) + v_0(t_{B}-t_A) + \frac{1}{2} a_0(t_{B}-t_A)^2
\end{align*}
\]
もう一つの基本の放物の微分方程式です。
\[
\begin{align*}
m\ddot{x} &= 0 \\
m\ddot{y} &= m(-g)
\end{align*}
\]
\[
\begin{align*}
\dot{x} &= v_{x}(t_A) \\
\dot{y} &= v_{y}(t_A)-gt
\end{align*}
\]
\[
\begin{align*}
x &= x(t_A) + v_{x}(t_A)t \\
y &= y(t_A) + v_{y}(t_A)t-\frac{1}{2}gt^2
\end{align*}
\]
面積で等加速度運動の距離を表します。
これで、準備万端ですが、愚直にやりましょう。
最高到達点までの時間を\(t_{up}\)として、そこから地面に落ちるまでを\(t_{down}\)とします。
\[
\begin{align*}
v_{By}-gt_{up} &= 0 \\
t_{up} &= \frac{v_{By}}{g}
\end{align*}
\]
ここから初速ゼロで加速度gで落下するので、
\[
\begin{align*}
\frac{7}{8}R = \frac{1}{2}gt_{down}^{2} \\
t_{down} &= \sqrt{\frac{7R}{4g}}
\end{align*}
\]
よって、この時間の横方向の移動距離は、
\[
\begin{align*}
v_{Bx}t_{up} + v_{Bx}t_{down} &= \frac{1}{2}\sqrt{gR} \frac{\sqrt{3}}{2}\sqrt{gR}\frac{1}{g} + \frac{1}{2}\sqrt{gR} \frac{1}{2}\sqrt{\frac{7R}{g}} \\
&= \frac{\sqrt{3}}{4}R + \frac{\sqrt{7}}{4}R
\end{align*}
\]
問4 Q
時間のあるときに解きます。
まとめ
これからの時代こそ、開発部などで働く人達は、筑波大学の過去問の様な素直な問題は、時間制限がなければ全問完答できなければならないと思います。
本稿は受験の参考にはしないでください。微分積分ありきですので。
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