二階微分方程式です。
一般の二階線形常微分方程式
\[ \frac{d^2}{dx^2}f(x) + g(x)\frac{d}{dx}f(x) + h(x)f(x) = i(x) \]
定数係数二階線形常微分方程式
\[ \frac{d^2}{dx^2}f(x) + a\frac{d}{dx}f(x) + bf(x) = i(x) \]
定数係数二階線形斉次常微分方程式
\[ \frac{d^2}{dx^2}f(x) + a\frac{d}{dx}f(x) + bf(x) = 0 \]
ばね
ばね定数を\(k\)とします。いつものように、空気抵抗と摩擦を無視します。
真空に近い状況にして、上から吊って静止点を中心とした運動とします。
静止点を\(x_0\)とします。
\[ mg-kx_0 = 0 \]
\[ m\ddot{x}(t) = mg-k(x+x_0) = -kx(t) \]
\[ m\ddot{x}(t) + kx(t) = 0 \]
ここで、空気抵抗を許可します。真空やめます。空気抵抗は、速度が小さい場合は速度に比例します。
\[ m\ddot{x}(t) = -c\dot{x}(t) -kx(t) \]
\[ m\ddot{x}(t) + c\dot{x}(t) + kx(t) = 0 \]
こじつけと言えば、こじつけですが、ばねの運動に対しての条件の設定の仕方によっては、運動方程式が定数係数二階線形斉次常微分方程式となります。
LCR回路
抵抗とコンデンサーとコイルと電池を考えます。
\[ V(t) = I(t)R + \frac{1}{C} \int I(t)dt + L\frac{d}{dt}I(t) \]
両辺を時間微分します。
\[ \dot{V} = L\ddot{I} + \dot{I}R + \frac{1}{C} I \]
根
ここでも厳密な議論は控えます。
\[ f(x) = (x-1)(x-2)^{2}(x-3)^3 = 0 \]
上記のとき、
1は、\(f(x)\)の根。
2は、\(f(x)\)の重根。
3は、\(f(x)\)の3重根。
今の高校と大学では、根が説明されるのは代数で、これは大学院の範囲となる場合が多いです。
根の説明がされないまま、定数係数二階線形斉次常微分方程式の説明が始まることの方が、圧倒的と言っていいほど多いのではないでしょうか。
定数係数二階線形斉次常微分方程式
下記とします。
\[ f(x) = e^{\lambda x} \]
一階微分。
\[
\begin{align*}
\frac{d}{dx}f(x) &= \frac{d}{dx}e^{\lambda x} \\[8pt]
&= \lambda e^{\lambda x}
\end{align*}
\]
二階微分。
\[
\begin{align*}
\frac{d^2}{dx^2}f(x) &= \frac{d^2}{dx^2}e^{\lambda x} \\[8pt]
&= \lambda^2 e^{\lambda x}
\end{align*}
\]
よって、
\[
\begin{align*}
\frac{d^2}{dx^2}f(x) + a\frac{d}{dx}f(x) + bf(x) &= \lambda^2 e^{\lambda x} + a\lambda e^{\lambda x} +be^{\lambda x} \\[8pt]
&= (\lambda^2 + a\lambda + b)e^{\lambda x} \\[8pt]
&= 0
\end{align*}
\]
\[ \lambda^2 + a\lambda + b = 0 \]
上記を特性方程式と定義します。
特性方程式の根を特性根と定義します。
ばね
真空とします。
\[ m\ddot{x}(t) + kx(t) = 0 \]
ここで、下記とします。
\[ \frac{k}{m} = \omega^{2} \]
特性方程式。
\[
\lambda^2 + \omega^{2} = 0
\]
根。
\[
\begin{align*}
\lambda^2 &= -\omega^{2} \\
\lambda &= \pm\sqrt{-\omega^{2}} \\
\lambda &= \pm\sqrt{i^{2}\omega^{2}} \\
\lambda &= \pm i\omega
\end{align*}
\]
となり、根の実部がゼロです。
現象は「振動を繰り返す」ので、発散です。
式の中を実数のみにする操作をします。
\(C_1\)と\(C_2\)は互いに共役な複素数とします。
\[
\begin{align*}
f(x) &= C_{1}e^{+i\omega x} + C_{2}e^{-i\omega x} \\
&= C_{1}e^{0}(\cos \omega x + i\sin \omega x) + C_{2}e^{0}(\cos \omega x- i\sin \omega x) \\
&= C_{1}(\cos \omega x + i\sin \omega x) + C_{2}(\cos \omega x- i\sin \omega x) \\
&= (C_{1} + C_{2})\cos \omega x + (C_{1}- C_{2})i\sin \omega x \\
&= 2A\cos \omega x- 2B\sin \omega x
\end{align*}
\]
これを描画すると「振動を繰り返す」ので、発散です。手っ取り早く描画するならWolframAlphaです。
空気抵抗を無視すると、いわゆる「判別式」が必ず負になります。場合分けは不要です。
その動作が微分方程式で表すことができたとして収束について考える
その動作が微分方程式で表すことができたとします。
微分方程式を解きます。関数を得ます。
ばねを考えて、空気抵抗がある場合を考えます。判別式が負の場合を考えます。
定数については好き勝手に操作してよいとします。
下記のかたちになります。
四角のところには、特性根の負の符号を取り除いた実部が入ります。三角のところには、定数が入ります。
\[ f(x) = e^{-\boxed{\phantom{c}}x}(A\cos \bigtriangleup x- B\sin \bigtriangleup x) \]
空気抵抗ありのばねなので、時間が経つと収束します。
一次元の熱伝導
一次元の熱伝導は下記の偏微分方程式で表されます。
\(t\)は時間で\(x\)は位置です。
\[
\frac{\partial}{\partial t}v(t,x)=\frac{(熱伝導率)}{(比熱)(密度)}\frac{\partial^2}{\partial x^2}v(t,x)
\]
これを変数分離法で計算していくと下記を得ます。
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
T'(t)+C kT(t)=0 \\
X^{\prime\prime}(x)+C X(x)=0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
位置について定数係数二階線形斉次常微分方程式の\(a=0\)の場合となっています。
解く
下記を解きます。但し、\(y(x)\)は実数のみで表します。
\[
y^{\prime\prime}+by=0
\]
特性方程式。
\[
\lambda^{2}+b=0
\]
- \(\lambda^{2}\)なので、実数解を持つならば\(b\lt0\)でなければなりません。
- \(b\gt0\)のとき\(\lambda\)は虚数解または複素解でなければなりません。(\(a\neq0\)のときは複素解になります。)
- \(b=0\)のとき\(\lambda^{2}=0\)。
\[
y^{\prime\prime}+y=0
\]
以降の議論は、読む前に、自分で手を動かして理解して、結局は読まずにすむことをお薦めします。難しくないので自分で導いた方が身に付きます。
\(b\lt0\)のとき。
\[
\begin{gather}
\lambda^{2}+b=0 \\
\lambda^{2}=-b \\
\lambda=\pm\sqrt{-b}
\end{gather}
\]
\[
y(x)=C_{1}e^{\sqrt{-b}x}+C_{2}e^{-\sqrt{-b}x}
\]
\(b=0\)のとき。
(\(a\neq0\)かつ\(b\neq0\)で重根のときはもう少し複雑になります。)
\[
y^{\prime\prime}=0
\]
\[
\begin{gather}
y^{\prime}=C_{1} \\
y(x)=C_{1}x+C_{2}
\end{gather}
\]
\(b\gt0\)のとき。
\(C_1\)と\(C_2\)は互いに共役な複素数とします。
\[
\begin{gather}
\lambda=\pm\sqrt{-b} \\
\lambda=\pm\sqrt{i^{2}b} \\
\lambda=\pm i\sqrt{b}
\end{gather}
\]
\[
\begin{align*}
y(x)&=C_{1}e^{i\sqrt{b}x}+C_{2}e^{-i\sqrt{b}x} \\
&=C_{1}\left( e^0(\cos(\sqrt{b}x)+i\sin(\sqrt{b}x))\right) +C_{2}\left( e^0(\cos(-\sqrt{b}x)+i\sin(-\sqrt{b}x))\right) \\
&=C_{1}\left( \cos(\sqrt{b}x)+i\sin(\sqrt{b}x)\right) +C_{2}\left( \cos(-\sqrt{b}x)+i\sin(-\sqrt{b}x)\right) \\
&=C_{1}\left( \cos(\sqrt{b}x)+i\sin(\sqrt{b}x)\right) +C_{2}\left( \cos(\sqrt{b}x)-i\sin(\sqrt{b}x)\right) \\
&=(C_{1}+C_{2})\cos(\sqrt{b}x)+(C_{1}-C_{2})i\sin(\sqrt{b}x) \\
&=2A\cos(\sqrt{b}x)-2B\sin(\sqrt{b}x)
\end{align*}
\]
ばね
真空として、常に\(0 \lt m\)かつ\(0 \lt k\)だから、上述の\(b\gt0\)のときに対応します。
まとめ
複素数アレルギーの人を多く知っているし、自分も少し複素数アレルギーだし、有名な定理の証明をした人達も複素数を使いながらも気持ち悪さを感じていたとのことです。
複素数にすんなり適応できない人は、土台は気に入らないけど定理の証明は正しいとして、距離を取り続けたほうがいいと思います。合わないのだから、数学だから考えれば絶対にわかる、という態度は放棄したほうがいでしょう。
非斉次微分方程式や複素関数を網羅的に詰め込まれて、燃え尽きない学生はとても少ないと思います。
参照
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